御岳山の麓で胃腸薬を製造販売している長野県製薬のホームページです。

2017年 秋

キキョウ

植物名: キキョウ
科名:  キキョウ科
生薬名: 桔梗根 (コルク皮を除去した根 日本薬局方収載)
学名:  Platycodon grandiflorum A. De Candolle

解説:
東アジアの温帯に分布する。全国の日当たりのよい山野の草地に自生し、花は観賞用、根は薬用として古くから栽培されている多年草です。花は夏から秋に咲き、大形で青紫色の一重合弁花を開く。野生状態では、近年個体数が減り環境省によって絶滅危惧II(VU:絶滅の危機が増大している種)に指定されています。栽培分野では多くの品種改良がされ、八重咲き、白花など多様な品種があります。
万葉集の山上憶良の歌「萩の花尾花葛花瞿麦の花女郎花また藤袴朝貌の花」で秋の七草によまれる朝貌は、現在のアサガオではなく桔梗だとされる。「新撰字鏡」で、桔梗に阿佐加保の字をあてていることが、その最大の根拠とされています。
その根は薬用として古くから利用されてきました。怯痰・鎮咳薬として咳嗽、気管支炎などに用い、また排膿薬として化膿性疾患、扁桃腺炎、咽喉痛などに応用する、重要な喉のくすりです。
日漢協の調査では、国内で医薬品原料として年間220t余りを使用し、その全てを中国に依存しているのが現況です。安心安全を命題とする薬用植物ですので、国内での栽培が急ピッチで推進されています。近い将来国内産が大きく流通すると見積もられています。

2017年 夏

コマクサ

植物名: コマクサ
科名:  ケシ科
生薬名: 駒草  (全草)
学名:  Dicentra peregrina (Rudolph) Makino

解説:
木曽御嶽山は富士山と同様、古くから山岳宗教の霊山として信者の登拝が盛んに行われてきた。祀る山神は、医薬の神と国土経営である少彦名命と大己貴命の二神であり創始由来はつまびらかでないが、文武天皇の時代、大宝二年(702年)に信濃国司高根道基が創建したと伝えられている。この信仰によって病苦が救われることが信頼され御嶽講社が各地に結成された。
霊山に成育する植物は皆御神薬とされ、チングルマやゴゼンタチバナ、イワツメクサなども、昭和の中期頃まで地元の薬屋で販売されていた。その中でもコマクサは御嶽五夢草の一つに数えられ、信仰の中では最も重要な薬草であった。
コマクサは高山植物の女王といわれ、現在、日本では特別保護指定植物なっているため採取することはできない。全草にアルカロイドを含有し、少量では麻酔作用があり、中等量以上では中枢に作用し激しい中毒症状を引き起こす。まさにケシ科の名に恥じない有毒植物である。痛みを訴える信者に、先達は祈祷と伴にコマクサを処方する。一時的ではあるが痛みは忽ち消失するであろう。コマクサは万能薬ではあり得ないが、そこは信仰の力、プラセボー効果がおおいに働き病気治癒に一役買ったとも考えられる。コマクサの用い方に熟知した少数の人が、先達として威厳を高めていったのかも知れない。
古い文献によると、明治43年だけで225Kgの採取が成されたことが記されている。

2017年 春

アマチャ

植物名: アマチャ
科名:  アジサイ科
生薬名: 甘茶
学名:  Hydrangea macrophylla Seringe var. thunbergii Makino

解説:
日本固有種で、本州の林に自生する高さ1~2mの落葉低木です。 ヤマアジサイの一系統で、甘味がある葉を持つ個体を、選別した変種になります。局方ではその基源を「Hydrangea spp.(アジサイ属品種)のうちの甘味のある成分変異株を民間で発見して使用をはじめたもの」とされている。進化の過程で生物は様々な形質を獲得していく。ヤマアジサイのある個体が人間のあずかり知らぬ間に、甘味成分であるフィロゾズルチンをため込んだ個体があったのだろう。それをたまたま人間が発見して甘茶として利用しはじめたのであって、植物形態学的にはヤマアジサイ殆ど同一です。
日本の野生植物(平凡社)によると「甘茶はこの変種だけでなく、フィロゾズルチンの含量の高いヤマアジサイの総称である」としている。現在アマチャとして流通しているのは栽培種がすべてで、天城産が有名であるが、近年は長野県信濃町周辺産が殆どを占めています。
甘味料・矯味料としての目的が主であったが、近年の薬学会の発表で含有成分であるヒドランゲノールに着目して重要な発表がなされた。本成分はインスリン増強作用があるというものである。今後、メタボリック症候群の方には福音になるかも知れない。

2016年 冬

カリン

植物名: カリン
科名:  バラ科
生薬名: 和木瓜(わもっか)  (果実)
学名:  Pseudocydonia sinensis (Thouin) Schneid.

解説:
中国原産で高さは約8m位になる落葉樹です。花も果実も美しく、さらに樹皮・新緑・紅葉が非常に美しいため家庭果樹として最適である。一説によると「金は貸しても借りん」という意味につながり、借金をしない縁起から庭木に好まれたともいわれるが、真偽は定かではありません。
果実は匂いも素晴らしく、部屋に幾つか置いておくだけで甘い香りが漂ってくる。表面はロウをかぶっているので磨くと艶が出ます。ちょっとした置き物にもなるし1ヶ月以上も香りを楽しめる。
落葉後の10~11月に、樹上に残って暗黄色に熟したものを採取して、10分程度湯通しして縦割りにして乾燥させたものが生薬で、和木瓜といいます。民間療法では良く知られた咳止めの効果があり、漢方では鎮咳・鎮痛に有効とされ脚気、腰痛などの漢方処方に応用する。
同属のマルメロは果実の表面が綿毛で覆われている点が異なるが、同じ用途で用いられる。

2016年 秋

コガネバナ

植物名: コガネバナ
科名:  シソ科
生薬名: 黄芩(おうごん) (根 日局)
学名:  Scutellaria baicalensis Georgi

解説:
コガネバナは中国北部からシベリアに分布し、草丈30~60cmとなる多年草です。生薬「黄芩」は周皮を除いた本種の根で、その名は断面が鮮やかな黄褐色をしていることに由来します。日本には薬用植物として導入され、享保年間に幕府の小石川御薬園で初めて栽培された記録があります。
木曽の伝承薬である百草は江戸の末期に生まれたとされ、その原料は御嶽五夢草を中心に木曽の自生種が用いられたと考えられてきた。しかし、コガネバナは紛れもなく外来種であり、本種が原料として用いられてきた経緯は長い間不明だった。古い文献をひも解いてみると、かつて木曽地域は尾張藩の領地で、江戸時代の中期には本草学者がこの地を訪れ薬草の調査・採取や薬草栽培の指導を行っていた記録も多く残っている。「木曽は尾張の薬箱」という位置付けを担っていたようで、自生種のみならず外来種の栽培も盛んに行われていたことが分かります。百草が生まれた背景には、この地域の人々に生薬の知識が普及していたことがあるようだ。
長野県製薬㈱の敷地内に鎮座する百草元祖の碑には、「嘉永二年(1849年)、胡桃沢弥七と小谷文七が普寛行者の遺法を共に謀りて百草を作るに初まる(要約)」と記されている。驚いたことに、それから30年余り後の明治12年9月30日付けの官許「百草製」の許可書には、黄蘗、黄連、当薬などに混じり黄岑の生薬名がある。この時代既に外来種を取り入れていたことがうかがえる。

2016年 夏

キハダ

植物名: キハダ [黄肌]
科名:  ミカン科
生薬名: 黄柏(おうばく) (内皮)
学名:  Phellodendron amurense Rupr.

解説:
蘗木(ばくぼく)の原名で神農本草経の中品に収録され、 その薬能は「五臓の病、腸胃の病、中に結熱した病、黄疸の病、腸痔を治す、云々」と記載されている漢方の要薬です。 日本では紀元前2000年頃の縄文時代の遺跡より「キハダ」の出土があり、 考古学上、使用が確認された最古の生薬の一つといわれている。
キハダの水製エキスを煮詰めて竹皮に延ばした製剤(陀羅尼助)は、 7世紀に山岳修験者の頭領として活躍した役行者小角(えんのぎょうじゃおずぬ)の創薬とされている。 山伏には必須の常備薬であり、木曽御嶽山にもその製法は伝わり、 霊山に自生する御神薬「御嶽五夢草(おんたけごむそう)」を処方し「百草」が誕生しました。 江戸の末期からは、全国の信者に格別の信頼を受け大量に製造された歴史があります。 四国では「練熊」、富山では「熊の胃」といった製剤があるが、いずれにしてもキハダを主原料としています。

2016年 春

イカリソウ

植物名: イカリソウ [碇草、錨草]
科名:  メギ科
生薬名: 淫羊藿(いんようかく) (地上部)
学名:  Epimedium grandiflorum C.Morren var. thunbergianum (Miq.) Nakai

解説:
主に林の中に生える多年草。 薬用として広く栽培されるほか、花の形や色が美しいので、鉢植えのほか庭に栽培される。 高さは15~30cm、根茎は横に短く這い、数本の茎が株立ちする。 早春に根葉に先立ち花茎を伸ばし、茎頂に数個の錨に似た花をつける。 根葉は、別名で「三枝九葉草」の名があり、葉に3本の枝があり9小葉をつける。 地上部(淫羊藿 日局)は強精・強壮薬として神経衰弱、健忘症、慢性気管支炎、手足のしびれ、更年期の高血圧症等に用いられ、 肉体的な強壮作用だけではなく、精神的な疲労感や憂鬱感にも効果がある。

2015年 冬

ナンテン

植物名: ナンテン
科名:  メギ科
生薬名: 南天実(なんてんじつ) (果実)
学名:  Nandina domestica Thunb.

解説:
ナンテンの音は「難転」に通じることから、昔から災難よけのまじないや縁起の木とされてきました。 妊婦が安産を祈願して床の下に敷いたり、武士が出陣の前に床に挿して勝利を祈願した。 不浄除けとも云われ厠のそばにこれを植え、手洗いに水がないとき、この葉で手を清めた、 これを「南天手水(ちょうず)」というそうです。火災除けに庭に植えたともいわれている。 種小名のドメスチカは「国内の、家庭的な」という意味があります。 言い伝えによってナンテンが、日本の多くの庭先に植えられている印象から、 この種小名がついたことを示しています。赤飯の重箱や、魚を贈るのにナンテンの葉を敷くが、 これは葉に含まれる薬用性(防腐効果)からきているとも考えられる。 その作用は効果的とはとても思えず、日本人の繊細な経験と知恵には驚かされます。
南天実はよく知られた喉の薬で、その安全性から医薬品から健康食品まで幅広く用いられている。 赤実と白実があり薬効の差異が議論されますが、含有成分を見る限り差異は無いように思われます。

2015年 秋

オケラ

植物名: オケラ
科名:  キク科
生薬名: 白朮(びゃくじゅつ)  (日局収載)
学名:  Atractylodes japonica Koidz.ex Kitam.

解説:
北海道以外の日本全国に分布し、乾いた山地に自生する多年草です。 若苗は白軟毛をかぶり、折ると白汁がしみ出る。若苗は美味な山菜とされ、 「山でうまいはおけらにととき、里でうまいのうり、 なすび、嫁に食わすのも惜しゅござる」という俚謡のオケラと トトキ(ツリガネニンジン)は、ともに山菜として珍しい初物の味を楽しむもの。 しかし、嫁に食わすのも惜しい、もったいないというほどうまいものではない。 オケラという名は、何とも奇異な響きがあります。 古名の「うけら」が訛ったという説やら諸説ありますが、 語源ははっきりしていません。
根茎には精油1.5~3%を含み、主成分はアトラクチロンで、 その他のセスキテルペン類が含まれています。 この精油には中枢抑制作用、軽度の血圧下降作用、 末梢神経の拡張作用などが認められています。 根茎(白朮)は健胃・整腸、利尿・鎮痛の目的で胃腸病、神経痛、動悸、 息切れなどに応用される。

2015年 夏

ドクダミ

植物名: ドクダミ
科名:  ドクダミ科
生薬名: 十薬(重薬)(日局収載)
学名:  Houttuynia cordata Thunb

解説:
便通薬や整腸薬として、又高血圧・狭心症・動脈硬化などの予防の目的で広く 茶剤として用いられている。日本固有の民間薬のように思われているが、 日本、台湾、中国、ヒマラヤ、ジャワにかけて広く分布している。 中国では魚腥草と称し、性味は辛・寒で清熱し解毒する、 利尿し腫れを消すの効能があり、肺炎、肺膿瘍、熱痢、水腫、 痔瘡などの要薬として位置付けている。
悪臭の成分はデカノイル-アセトアルデヒドを主とする脂肪族アルデヒドであり、 優れた抗菌作用を持つことが知られています。 薬を離れた用い方として、生葉をコップに差し冷蔵庫に置けば消臭効果抜群という。

2015年 春

カタクリ

植物名: カタクリ
科名:  ユリ科
生薬名: 片栗澱粉(かつては局方収載品であった)
学名:  Erythronium japonicum Decne

解説:
早春に開花して初夏には地上部が枯れる春植物の代表的な種です。 鱗茎からは良質の澱粉がとれ、かたくり粉の原料となる。カタクリの鱗茎は小さく、 地中深く潜っていく性質があるので収穫するには相当苦労します。 これを5〜6月に掘り、外皮を除きすりつぶして水を加え、木綿でこし、 数回水洗後乾燥させると片栗澱粉ができます。
片栗澱粉の薬用利用としては、風邪・下痢・腹痛のあとの滋養強壮に、 少量の水でこねた後、熱湯を加えて「くず湯」にして服用します。 澱粉を直接患部にふりかけ、擦り傷、できもの、湿疹に効果があるとされています。