生薬手帳Crude drug

キキョウ(日局収載)

基源
学名 Platycodon grandiflorus (Jacq.) A.DC.

【科名】キキョウ科
【生薬名】桔梗根
【薬用部位】根 (コルク皮を除去した根 日本薬局方収載)

日本各地と朝鮮、中国などの東アジアの温帯に広く分布し、山野の日当たりのよい乾いた草地に自生し、または観賞や薬用としても栽培される多年草です。
花は観賞、根は薬用として用いられます。

夏から秋頃になると、花は自生品のほとんどでは青紫色の鐘形一重のものが咲きますが、園芸品では品種改良が進み、白花や八重咲きのものが作られてきました。
野生状態では、近年個体数が減り環境省によって絶滅危惧Ⅱ類(VU:絶滅の危機が増大している種)に指定されています。

キキョウという和名は、漢名の桔梗からきたものであり、中国最古の薬物書『神農本草経』に初めて記載されたと言われています。
学名のPlatycodon grandiflorus A.DCは、属名Platy(広い)codon(鐘)と、種小名grandi(大きな)florus(花)の意味で、「大きな広い鐘状の花」と花の形に由来します。

また、英名ではBalloon flowerと言われるように、開花前の蕾が風船のように膨らむことから、こちらも特徴的な外観から付けられた名前であることが分かります。

秋の七草といえば、『万葉集』の山上憶良の
「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
「萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 姫部志(をみなへし) また藤袴 朝貌の花」
と詠まれる歌が念頭に浮かびますが、この朝貌の花はアサガオではなく桔梗と言われています。これは、平安時代の漢和辞典である『新撰字鏡』に「桔梗、阿佐加保」と書かれていることが根拠とされています。

「新撰字鏡」の記載

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国立国会図書館ウェブサイト」から転載

成分はサポニン、イヌリン、ステロール、トリテルペノイドなどを含みます。
効用としては、鎮咳・去痰薬として咳や気管支炎などに、また排膿薬として化膿性疾患、扁桃腺炎、咽頭痛などに応用される重要な喉の薬です。

漢方処方に用いられるのはもちろんのこと、喉飴やトローチなどにも使用されています。
薬用だけでなく、無病長寿を祈ってお正月に飲まれる「お屠蘇(とそ)」の材料のひとつとしても知られています。

<文献>
牧野和漢薬草大図鑑(北隆社)
日本の野生植物(平凡社)
花と樹の大事典(柏書房)
薬草歳時記(ぎょうせい)
改訂版生薬便覧

使用されている製品

※上記の効用はあくまで生薬に関するものであり、各製品の効能・効果を保証するものではありません。
製品に関しては、製品案内や添付文書、製品記載の効能・効果などをご確認ください。

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