生薬手帳Crude drug

イカリソウ

基源
Epimedium grandiflorum C.Morren

【科名】メギ科
【生薬名】淫羊藿いんようかく
【薬用部】地上部

北海道西南部、本州の太平洋側、四国、九州に分布し、薬用や観賞用に広く栽培される多年草です。

根茎は太くて短く横に這い、細い根を数多く出します。
根出葉には長い柄があり、2~3回3出複葉になり(別名サンシクヨウソウ(三枝九葉草)といい、3本の枝(柄)から9小葉つけるという意味)、小葉は卵形で、基部は心臓形または矢じり形になり縁に刺毛状の鋸歯が多いのが特徴です。
花期は4~5月で、高さ30~50cmほどの花茎に根出葉とよく似た葉を1枚つけ、上部に総状花序をつくり4~7花を開きます。花は下向きに開き白から紅紫色で、花弁は4枚あり長い距があり、これが錨に似ているので錨草の名の由来となりました。

生薬名は淫羊藿いんようかくです。これは中国の故事に由来する名称であり、四川省北部の山中でヒツジがこの草(現地では藿と呼ばれていた)を食べて1日に100回交合したことから淫羊藿の名が生まれたといわれています。

イカリソウの代表的な薬効に「強壮・強精」効果がありますが、これは言い伝えだけが根拠ではなく、動物実験ではイカリソウの葉と茎に含まれるイカリニンと地下部に含まれるマグノフロリンを与えたところ精液の分泌がみられました。この男性ホルモン様作用が間接的に催淫作用や勃起に繋がるとの報告もあります。
また、エピメジンは性ホルモンの分泌を促し、知覚神経を興奮させる作用があることが知られています。

さらに、イカリソウは神経衰弱、健忘症、強精、強壮に用いるとされ、肉体的な強壮作用だけではなく、精神的な疲労感や憂鬱感にも効果があります。 気分がわかないときにも有効です。

淫羊藿として利用する植物には牧野和漢薬草大図鑑(岡田稔監修)によると次の5種類のイカリソウ属が収載されています。
トキワイカリソウは北陸地方から山陰地方の日本海側に生えています。福井県以西では花が紅紫色のものが目立ち、北陸では白花が多いのが特徴。常磐の名のとおり、根出葉は冬にも枯れません。
キバナイカリソウは本州近畿地方以北、北海道、朝鮮半島に分布し花は淡黄色です。バイカイカリソウは中国地方~九州の暖地に分布します。花は白色で花弁に距がなく梅の花状となります。
ホザキイカリソウは中国原産で花序の形が穂のような形になります。天保年間頃日本に伝わったと言われています。この植物こそ三枝九葉草で、中国故事に基づく植物です。