

ビャクジュツ(白朮)
基源
オケラ Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura の根茎(和白朮) 又はオオバナオケラ Atractylodes macrocephala Koidzumi
(Atractylodes ovata De Candolle) (Compositae キク科) の根茎(唐白朮)
【科名】キク科
【生薬名】白朮(ビャクジュツ)
【薬用部位】根茎(日本薬局方収載)
ビャクジュツ(白朮)とは?
ビャクジュツ(白朮)は、キク科のオケラ(和白朮)またはオオバナオケラ(唐白朮)の根茎を用いる生薬です。芳香性健胃薬、止瀉整腸薬、利尿薬の原料として古くから薬用に用いられ、水分代謝の改善や胃腸の働きを助ける目的で多くの漢方処方に配合されます。また、一年間の邪気を払い長寿を願ってお正月に服用する薬酒「屠蘇散」にも配合される、日本伝承の和薬です。
オケラ(白朮の基原植物)について
オケラは本州から九州,朝鮮半島,中国東北部に分布し,平地から低山にかけて,日当たりの水はけがよい山野や丘陵地の林中に自生する多年生草本植物です。夏から秋に白花をつけ,総苞は魚の骨のような棘状の形をしています(写真1)。春先の新芽は古くから食草としても利用され、その根茎は芳香性健胃薬,止瀉整腸薬、利尿薬の原料として薬用に用いられてきました。
写真1 オケラの花
根茎の利用と歴史
根茎(写真2)の使用方法は乾燥品を粉末として使用することもありますが、お湯で煎じる方法もあり、奈良時代、天武天皇が朝鮮の百済から僧が呼んでオケラの根茎を煎じて用いた記録が残っています。
オケラの植物は、万葉集では宇家良(うけら)と称せられ、詠まれています。また、京都八坂神社では古くから12月31日に「をけら詣り(白朮祭り)」が行われています。
写真2 根茎(和白朮)
屠蘇散
このように和白朮は日本伝承の和薬で、一年間の邪気を払い、長寿を願ってお正月に服用する薬酒「屠蘇散」は代表的な薬剤です。身体を温める,胃腸の働きを助ける風邪の予防薬であり、山椒,和白朮,防風,桔梗,桂皮,陳皮が配合されています。
漢方処方に使用される白朮
白朮は水分代謝改善や利尿作用を期待し、胃腸の働きを助ける作用が強いとして用いられる漢方処方薬です。中国では古くから唐白朮(写真3)が使用されています。中国東北地方に自生する和白朮は蒼朮に分類され、白朮として使用することはありません。
使用方法として散剤(粉末剤)としてあるいは丸剤として使用することがあります。その場合は色合いが薬剤の重要な要素となるので、周皮を除いた皮去り品が用いられます。
写真3 唐白朮 左:皮付き品 右:皮去り品
中国漢方が隋から伝えられましたが、日本では唐白朮がなく、室町時代から中国からの輸入に頼っていました。江戸時代に鎖国を迎え、中国からの輸入も制限されてしまいます。その唐白朮の代替品として、日本に自生する和白朮が漢方で使用されるようになりました。現在、日本で活躍する中医学の中医は唐白朮を使用しますが、日本漢方の漢方医は古方派、後世方派などの流派により、和白朮を使用しています。
オオバナオケラの試作栽培
天保年間、江戸幕府は唐白朮の原料植物であるオオバナオケラ(写真4)の国内導入を図りました。まず長崎の御薬園に植物を導入し、その後、株分けして江戸の御薬園(現在の小石川植物園)、各藩の御薬園などに植栽しています。しかし明治維新を迎え植栽事業は各県に任せる形となり途絶えてしまいます。
昭和時代後期、日中国交回復を迎え研究交流が盛んになり、オオバナオケラは全国の薬科大学に設置される薬用植物園で試作栽培されるようになりました。
写真4 オオバナオケラの花
<文献>
牧野和漢薬草大図鑑(北隆館)
日本薬草全書(新日本法規)
くらしの薬草と漢方薬(新日本法規)
薬草カラー図鑑(主婦の友社)
信州身近な薬草(信濃毎日新聞社)
汎用生薬便覧
公益社団法人日本薬学会薬用植物一覧
新古方薬囊(方術信和會)
日本薬園史の研究(渡辺書店)



